次世代インフラ
No.6洋上風力(風力ブレード)
概要
安全・安心な数世紀社会を実現させるために、海洋インフラ分野において再生可能エネルギーを生み出す洋上垂直軸風車のブレードにCOI事業の成果となる、連続成形が可能な革新複合材料を適用させることにより、従来と比較して軽量・ローコストなブレードを日本国内から供給することができます。そのブレードを用いた浮体式風力発電構想は日本の設置条件に適し、グリーン成長戦略を担い脱炭素化時代の実現に寄与することができます。
海洋インフラ分野における洋上風車は、日本が目指す「2050年カーボンニュートラル」においても重要な役割を担います。国は洋上風力発電の導入目標を2040年に30~45GW(10MW風車3,000から4,500台相当)を掲げており、大量の風力発電を海に設置する場合、陸から離れ、急激に深くなる日本の海底地形には着床式風車よりも浮体式風車が適しています。(図1)
図1:水深60m以上は浮体式風力発電が適する
一方、洋上風車は経済性向上のため大型化が求められています。一般的な水平軸型風車の場合、ブレード(翼)長さが100mを超え、曲げ荷重に耐え複雑な3次元的形状であるためモールド(型)を使った一体成型になります。そのため巨大な工場でつくる必要があり、日本では対応できずすべて海外生産となっています。しかし、垂直軸型風車においてブレード(翼)が同一断面の直線翼になるので、ブレード(翼)の長さを分割することができることと、COI事業の成果であるハイスピード連続成形技術を適用することが可能となります。「ダブルベルトプレス」による革新複合材料の連続的な平板製造技術や、「間欠プレス」や「ロールフォーミング」により連続的に構造材の形状をつけブレードを構成する強度部材として大型垂直軸型風車のブレード製造に革新複合材料を適用することができ、ブレードの製造面において大きなアドバンテージを持つことができます。そのブレードの構造材となる形状を確認するため10kW垂直軸型風車のブレードのカットサンプルを試作しました。(図2)
図2:垂直軸風車ブレードへ革新的複合材料製造方法適用
日本が目指すカーボンニュートラルの観点から浮体式風車が優位でありかつ、COIの革新的複合材料製造技術を活かす垂直軸風車の両方を兼ね備えた、「次世代浮体式風力発電」のFSが「A-STEPシーズ顕在化研究」にて採択され、本学ICCと大阪大学、民間企業と共同で1MW風車の1/40スケールの模型を試作し、水槽実験を行いました。(図3)
図3:1MW1/40スケール水槽試験用模型
波と風による挙動を解析し、風車構成部材に係る荷重計算によりブレードの材質をFRP、アルミニウムとラージトウCFRPと比較し、軽量なラージトウCFRPが、遠心力への対応と浮体サイズの縮小により、総合的に最も安価であることが分かりました。また発電コストは5MW機において15円/kWhの推定となり、他の浮体式が目指す20円/kWhよりも競争力が高いものとなりました。グリーン成長戦略では8-9円/kWhが目標となっているので更なる大型化、国の海域占用ルールの整備も視野に入れる必要があります。今後、積極的に外部資金を獲得することにより数10kWモデルにて実際に海洋においてフィールドテストを重ねスケールアップしていく必要があります。なお本研究では「浮体式垂直軸型タービン」と「浮体式水上風車及び浮体式水上風車の設置方法」ついて特許出願をしています。