新規相溶化剤の研究と界面接着性の評価
ポリプロピレン (PP)は分子内に極性基がないため,繊維との界面接着性が低くなってしまう.そこで重要となるのが相溶化剤である.PPの一般的な相溶化剤としてはマレイン酸変性PP (MAPP)が知られている.しかし,MAPPは結晶性が低いためにマトリックスであるPPの結晶性や,機械的特性に影響を与えることがある.
ICCではイソタクチックポリプロピレン(iPP)の両末端にポリアクリル酸(PAA)を導入したiPP-PAA共重合体(図1)を新規相溶化剤として用いた.iPP-PAAはブロック共重合体であることから,iPPの結晶性をある程度保持し,イオン基であるPAAがブロック鎖で存在することで,マトリックスの結晶性に影響を与えずに繊維表面の官能基に広範囲で結合し,従来のMAPPよりも高い界面接着性の向上が見込める.
界面接着性の評価の1つにマイクロドロップレット試験がある.マイクロドロップレット試験は図2のように単繊維に樹脂玉を成形し,樹脂玉から繊維を引き抜くことで,界面せん断強度を測定する方法である.iPP-PAAを添加した場合,未添加のPP単体と比べて約3倍も界面せん断強度が増加し,相溶化剤として樹脂と繊維の界面接着性を向上できることがわかった.